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名古屋地方裁判所 昭和52年(ワ)2911号 判決 1985年10月25日

名古屋市東区泉一丁目三番三二号

原告(反訴被告)

コーヨー株式会社

右代表者代表取締役

岩田重代

右訴訟代理人弁護士

近藤倫行

長野市篠ノ井布施高田七一番地一

被告(反訴原告)

光葉スチール株式会社

右代表者代表取締役

牛越経基

右訴訟代理人弁護士

相沢岩雄

右訴訟復代理人弁護士

久保田皓

主文

一  被告(反訴原告)は、原告(反訴被告)に対し、金五〇〇万円及びこれに対する昭和五二年一二月一七日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  その余の原告(反訴被告)の本訴請求を棄却する。

三  反訴原告の反訴請求のうち、反訴被告の債務不履行に基づき損害の賠償を求める訴えは、いずれもてれを却下する。

四  反訴被告は反訴原告に対し、金三〇〇万円及びてれに対する昭和五三年九月三日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

五  反訴被告は「コーヨー株式会社」なる商号の使用をしてはならない。

六  その余の反訴原告の反訴請求をいずれも棄却する。

八  訴訟費用は、本訴、反訴を通じてとれを二分し、その一を原告(反訴被告)の負担とし、その余を被告(反訴原告)の負担とする。

九  この判決の第一項及び第四項は仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求める裁判

(昭和五二年(ワ)第二九一一号事件-以下「本訴請求事件」という。)

一  原告の請求の趣旨

1  被告は原告に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する昭和五二年一二月一七日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告の答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

3  担保を条件とする仮執行免脱宣言

(昭和五三年(ワ)第二一四九号反訴請求事件-以下「反訴請求事件」という。)

一  反訴原告の請求の趣旨

1  反訴被告は反訴原告に対し、金七八四一万円及び内金二四四八万円に対する昭和五三年九月三日から支払済みに至るまで年六分の割合による金員、内金五三九三万円に対する右同日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  反訴被告は「コーヨー株式会社」なる商号の使用を止めよ。

3  反訴被告は愛知県、三重県、岐阜県、茨城県、及び東京都において発行する中日新聞及び毎日新聞に二日間引続き五号活字で別紙五の文案の謝罪広告をせよ。

4  訴訟費用は反訴被告の負担とする。

5  仮執行宣言

二  反訴被告の答弁

(本案前の答弁)

1 反訴原告の訴をいずれも却下する。

2 反訴費用は反訴原告の負担とする。

(本案に対する答弁)

1 反訴原告の請求をいずれも棄却する。

2 反訴費用は反訴原告の負担とする。

第二  当事者の主張

(本訴請求事件)

一  原告の請求原因

1 原告は、陶磁器製品その他の雑貨類の買入れ及び輸出、並びに文房具、学校用スチール製品の販売を目的とする会社であり、被告と原告とは学校用スチール製品販売業において競業関係にある。

2(一) 被告は、昭和五二年八月ごろ、原告の東京営業所及び北関東営業所が営業区域としている東京都、埼玉県、茨城県、千葉県等に所在する建築会社、設計事務所、スチール製品販売業者宛に原告の業務内容等につき虚僞の事実を記載した各文書(以下「本件各文書」という。その内容は別紙一ないし三のとおり)を相当数配布した。

(二) 本件各文書の記載内容のうち虚僞の部分は別紙四(一覧表)の虚僞記載欄記載のとおりである。

なお、右虚僞部分の真実は同別紙の真実欄記載のとおりである。

(三) 被告は、本件各文書虚僞の事実の記載があることを知り又は過失により知らないで右(一)の行為をしたから、民法七〇九条若しくは不正競争防止法一条一項六号、一条の二により、原告の被つた後記3の各損害を賠償する責任がある。

3(一) 原告は、被告が本件各文書を配布した当時、別表一、二各記載の各学校に対し、同表の各商品名記載の各商品の売込みをしていたところ、被告が本件各文書を配布したことにより、その売買契約はいずれも不成立となつた。

右各売込みは、本件各文書が配布されなければ、いずれも売買契約成立に至ることが確実であつたから、原告は本件各文書の配布により、右各売買契約成立によつて原告が得べかりし利益を喪失したというべきところ、右各売込みにかかる各商品の価格(別表一、二の各代金欄記載のとおり)の少なくとも三〇パーセントは、原告の得べかりし利益であり、その額は、右各商品代金合計金三五五四万〇五〇〇円の三〇パーセントである金一〇六五万円(万円未満切捨)である。

(二) また、本件各文書の性質上、原告においてその配布先すべてを調査することは不可能というべきところ、本件各文書の配布により失われ、また、失われる可能性のある原告の業務上の信用、名誉は重大である。

したがつて、本件各文書の配布により原告の被つた無形損害は金一〇〇〇万円を下廻ることはない。

4 よつて、原告は被告に対し、民法七〇九条若しくは不正競争防止法一条一項六号、一条の二により前項(一)、(二)記載の各金員合計二〇六五万円の内金一〇〇〇万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和五二年一二月一七日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による金員の支払いを求める。

二  原告の請求原因に対する被告の認否

1 請求原因1の事実のうち、原告の会社の目的は知らない。その余は認める。

2 同2について

(一) 同2(一)のうち本件各文書の内容が虚偽であることは否認する。原告の営業区域は知らない。その余は認める。

なお、本件各文書は、極めて限定された二、三の取引先に配布したにすぎない。

(二) 同2(二)、(三)は争う。

3 同3(一)、(二)、4は争う。

三  被告の主張

1 本件各文書のうち、原告主張の各虚偽部分はいずれも真実である。すなわち、

(一) 被告と原告は、昭和四七年三月四日、後記一反訴原告の請求原因欄の(債務不履行に基づく損害賠償請求)1主位的請求原因(一)記載の専属的継続販売契約を締結し、右契約に基づき原告は愛知県、三重県、岐阜県内において被告製造の学校用スチール家具(以下「被告製品」ともいう。)を販売していたが、原告は、被告のカタログを使用して販売しながら、被告製品ではない粗悪品を他から仕入れ、これを被告製品と偽つて納品し、被告はそのために昭和五〇年七月、愛知県教育委員会から被告製品と異なる粗悪品が納入されているとの通知を受けた。

(二) その後、右契約は、昭和五〇年九月二〇日解除されたが、原告(岩田重代が代表取締役であり、その兄弟である岩田重朗、岩田重臣が取締役である。)は、右契約解除前である昭和五〇年二月一日にその商号(当時の商号は萬国貿易株式会社)を、不正競争の目的をもつて、被告の商号と類似する現商号(コーヨー株式会社)に変更し(同年二月三日変更登記。なお、被告は右の商号変更を右契約解除に至るまで知らなかつた。)、前記契約解除後に、被告製品と同種の学校用スチール家具の販売を開始したが、そのカタログについては被告と類似するカタログを作成、使用し、或いは前記契約により原告において所持していた被告のカタログを使用して、前記商号が類似していることと相まつて被告の販売活動と誤認混同を生ぜしめる販売活動を、従来の被告の得意を中心としてなし、また、製造工場を持たないのに、あたかも製造工場を有するかのように宣伝するに至つた。

(三) そして、原告は、被告製品の図面を用いて粗悪品を製作させて岡山県吉備小学校に熊平金庫岡山営業所を経由して納品しようとしたり、松山日赤に岩本商会を経由して納品しようとしたり、京都府、兵庫県が被告製品を指定したのに被告とは関係のない株式会社三吉に落札させ、被告製品のように見せかけて納品しようとしたりしており、茨城県は、被告の説明により、現場関係へ原告の販売品を被告の製品と間違えて購入しないよう通知を発するに至つた。

(四) したがつて、本件各文書のうち、原告主張の各虚偽部分は、いずれも真実である。

2(一) 右のとおり、原告は被告の販売活動と誤認、混同を生ぜしめる販売活動をなしており、それにより、被告は後記反訴請求事件において主張の損害を受けるに至つた。また、被告の取引先にも混乱が生じて、取引先からの被告への照会も相次ぎ、取引先からの要望もあつて、原告と被告の相違及び経過について説明する必要が生じた。

(二) そこで、被告は本件各文書を極めて限定された二、三の取引先に配布した。

(三) 被告は、本件各文書のうち、別紙一、二の内容の文書を配布するに際しては、別紙一から明らかなとおり、一般には配布することのないよう特に注意をつけ加えている。

(四) 右事情からすれば、本件各文書の配布は被告の営業防衛のためのやむを得ない正当業務行為であつて、社会的に認容される限度内のものであるから、違法性を阻却されるものである。

四  被告の主張に対する原告の認否

1 被告の主張1について

(一) 同1柱書は争う。

(二) 同1(一)は否認する。

なお、原告は被告主張の契約を締結したことはない。右契約を締結したのは、被告と岩田重朗である。また、原告は昭和五〇年秋ごろ、カタログを独自に製作し、これによつて販売活動をしている。

(三) 同1(二)、(三)のうち、原告が被告主張のとおり商号の変更をしたことは認め、その余は否認ないし争う。同1(四)は争う。

なお、原告は、岐阜県所在の北川金属工業株式会社と提携して学校用スチール家具を製造している。また、ロツカー、下駄箱の構造、外観などは、どのメーカーの製品をとつても大同小異であるが(それ故、カタログも大同小異となる。)、それは右スチール家具の技術的機能に由来するものである。

2 同2について

(一) 同2(一)のうち、原告が被告の販売活動と誤認、混同を生ぜしめる販売活動をなしていること及び被告の損害は否認する。

(二) 同2(二)のうち、本件各文書の配布数は否認する。

本件各文書作成の動機、本件各文書がそれ自体隠密性を有しなかなか顕在化されない性質をもつものであることを考えれば、本件各文書は少なくとも関東一円に相当部数配布されたものとみるべきであり、その配布方法も被告の代理店等を経由したものと考えられるから、本件各文書の内容を知り得る関係者は相当数にのぽると考えられる。したがつて、本件各文書の配布は原告の営業を妨害するに十分である。

(三) 同2(四)は争う。

(反訴請求事件)

一  反訴原告の請求原因

(債務不履行に基づく損害賠償請求)

1  主位的請求原因

(一) 反訴原告と反訴被告は昭和四七年三月四日左記内容の専属的継続販売契約(以下「本件契約」ともいう。)を締結した。

(1) 反訴原告は反訴被告に対し、愛知県、三重県、岐阜県内において、反訴原告製造の学校用スチール家具(被告製品)の販売を独占的にさせ、右三県内においては他のものに被告製品を販売させない。

(2) 反訴被告は、右三県以外の地区においては、被告製品を販売しない。

(3) 反訴被告は、被告製品以外の学校用スチール家具は販売しない。

(4) 反訴原告は反訴被告に対し、毎年一月中に反訴被告の販売目標額を示達し、反訴被告は右目標額を達成する。

(5) 反訴原告は、反訴被告の販売が不成積であると認められるときは、契約を解除することができる。

(二) 右契約により、反訴被告は反訴原告から示達された販売目標額を達成する義務を負つたところ、昭和四八年一〇月一日から同五〇年九月二〇日までの反訴原告が反訴被告に示達した販売目標額は合計金二億二〇〇〇万円であつたのに、反訴被告は右期間内に合計金六六九八万円の販売実績をあげるに止まり、販売目標額のうち合計金一億五三〇二万円は未達成となつた。

(三) 反訴被告の右債務不履行(販売目標未達成)により、反訴原告は、少なくとも右未達成額の一六パーセントに相当する得べかりし利益(金二四四八万円)喪失した。

(四) よつて、反訴被告は反訴原告に対し、債務不履行に基づき、反訴原告の右損害を賠償する責任がある。

2  予備的請求原因

(一) 本件契約により、反訴被告は被告製品以外の学校用スチール家具を販売してはならないという義務を負つたが、反訴被告は右義務に違反して、昭和四八年一〇月一日以降同五〇年九月三〇日に至るまでの間に、被告製品以外の学校用スチール家具を販売した。

右被告製品以外の学校用スチール家具の販売高は合計金二億二三〇二万円であり、右反訴被告の義務違反がなければ、反訴原告は被告製品について右と同額の販売実績を挙げることができた。

(二) 反訴被告の右債務不履行(他社製品の販売)により、反訴原告は、少なくとも右販売高合計金二億二三〇二万円の一六パーセントに相当する得べかりし利益(金三五六八万円)を喪失した。

(三) よつて、反訴被告は反訴原告に対し、債務不履行に基づき、反訴原告の右損害を賠償する責任があるところ、反訴原告は反訴被告に対し、右損害のうち金二四四八万円及びこれに対する本件反訴状送達の日の翌日である昭和五三年九月三日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

(不法行為に基づく損害賠償請求)

1  本訴請求事件三被告の主張1に記載のとおり、反訴被告は、(一)不正競争の目的をもつて、その商号を原告の商号と類似する商号に変更し、(二)学校用スチール家具のカタログについて反訴原告類似するカタログを作成、使用し、或いは前記契約により反訴被告において所持していた反訴原告のカタログを使用して、右商号が類似していることと相まつて反訴原告の販売活動と誤認混同を生ぜしめる販売活動をした。右は反訴被告の不法行為である。なお、本訴請求事件三被告の主張1(三)記載の各行為(吉備小学校の件、松山日赤の件、株式会社三吉の件)は、いずれも、反訴被告が反訴原告の販売活動と誤認、混同を生ぜしめる意図を有して販売活動を行なつたことの証左である。

2  しかも、反訴被告は反訴原告の従業員であつた平井忠が反訴原告のセールスマンとして受注していたものを平井忠と共謀して横取り受注して販売し、反訴原告が昭和五一年九月に平井忠を解雇するや、同人を所長として北関東営業所を開設し、反訴原告製品と類似する商品の販売を開始するに至つている。

右も反訴被告の不法行為である。

3  反訴被告の右各不法行為により反訴原告は、昭和五〇年一〇月一日から同五八年九月三〇日までの間に、少くとも金八三九三万円の得べかりし利益を喪失した。

右得べかりし利益の算出根拠は次のとおりである。すなわち、

反訴原告は、反訴被告の右各不法行為がなければ、愛知県、三重県、岐阜県の三県下において少なくとも昭和五〇年一〇月一日から同五三年九月三〇日までの期間内の各年につき反訴原告製品を合計金一億一〇〇〇万円を売上げることができたものというべきとこころ、右期間内における反訴原告の販売実績及び利益率は左記のとおりであるから、これから反訴原告の右期間内の得べかりし利益を算出すると金三三九三万円となる。

〈省略〉

そして、昭和五三年一〇月一日から同五八年九月三〇日までの五年間については、右昭和五二年一〇月一日から同五三年九月三〇日までの損害額からしても、年額一〇〇〇万円(合計五〇〇〇万円)を下廻ることはないこと明らかである。

4  右のほか、反訴原告は反訴被告の前記各不法行為により、その名誉と信用を著しく害されており、右無形損害を金銭に見積もると金二〇〇〇万円を下廻ることはない。

5  よつて、反訴被告は反訴原告に対し、不法行為に基づき右各損害を賠償する責任があるところ、反訴原告は反訴被告に対し、右各損害合計金一億二八四一万円のうち金五三九三万円及びこれに対する不法行為の日の後である昭和五三年九月三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

(商号の使用差止等)

1  反訴原告の商号は「光葉スチール株式会社」であるところ、反訴被告の商号は「コーヨー株式会社」であり、右両商号は、商法二〇条一項にいう類似商号である。すなわち、

類似商号とは一般取引市場における一般人の判断を基準として誤認混同の生ずるおそれのある商号を意味し、商号自体の字数、字種等の形式的要素の比較だけでなく、取引界の実情を考慮して誤認混同を生ずるおそれのあるものは、これを類似商号というべきである。そして、右両商号は、その主要部分すなわち通称、略称としてピツクアツブされる部分である「光葉スチール株式会社」の「光葉」部分と「コーヨー株式会社」のコーヨー部分(反訴被告自身、そのカタログにて「コーヨー」という文字を略称、通称として商品名に使用している。)とが、「こーよー」という発音において一致しており、右両商号の「こーよー」部分が漢字か片仮名か、「スチール」部分があるかないかという形式的差異はあるにせよ、右両商号は類似商号である。

また、右に、反訴原告と反訴被告の販売目的物が同一であること、後記のとおり反訴被告は反訴原告内に営業所を置き、第三者に対しては「こーよー」ですと表現して販売活動を行なつていること、前記(不法行為に基づく損害賠償請求)の(三)記載の如き誤認混同を生じた具体例もあることを付加すれば、両商号が類似商号であることは一層明らかである。

2  反訴被告は、反訴原告の商号が「光葉スチール株式会社」であることを知りながら、前記のとおり、昭和五〇年二月一日にその商号を変更(同年二月三日変更登記)したが、右商号変更及び同商号の使用には、商法二〇条一項にいう、不正競争の目的がある。すなわち、

不正競争の目的とは自己の営業をして他人の営業と誤認混同せしめる目的、すなわち他人の商号が有する信用ないし経済的価値を自己の営業に利用しようとする意図をいうところ、反訴被告に右意図の存在することは、次の各事実により明らかである。

(一) 反訴被告の取締役(専務)である岩田重朗は、昭和四六年から一年間反訴原告の従業員として業務見習をしていた。

(二) その後、岩田重朗は、反訴被告の従業員として、反訴原告と反訴被告との間の前記専属的継続販売契約に基づいて、反訴原告内に反訴被告の営業所を置いて、反訴原告製品の販売をしていた。

(三) そして、反訴被告は、右1の商号変更をし、前記(不法行為に基づく損害賠償請求)の各不法行為をなすに至つた。

3  よつて、反訴原告は反訴被告に対して、商法二〇条一項により反訴被告の「コーヨー株式会社」なる商号の使用の差止めを求め得る。

4  また、反訴原告は学校用スチール家具の専門メーカーとして昭和三六年一〇月二三日に設立された株式会社であるが、現在学校で用いられているロツカー、下駄箱等の学校備品の多くは、反訴原告の設計、開発によるものであり、その普及は全国的に首位を占めている。そして、被告は全国各地に販売網を有するが、特に東海地方においては、極めて活発な営業活動を行ない、昭和四六年までには、四〇〇余校からその製品を採用され、安定した基盤を有している。

したがつて、右1.2の事実は不正競争防止法一条一項二号に該当する。

5  よつて、反訴原告は反訴被告に対して不正競争防止法一条の二第三項により、愛知県、三重県、岐阜県、茨城県及び東京都において発行する中日新聞及び毎日新聞に二日間引続き別紙五の文案の謝罪広告をなすべきことを求める。

(結論)

よつて、反訴原告の請求の趣旨記載の判決を求める。

二 反訴被告の本案前の主張

反訴請求はいずれも本訴の請求または防禦方法と牽連性がない。すなわち、本訴請求は被告(反訴原告)が虚僞内容を記載した文書を多量に配布したことによる原告の損害の賠償請求であるのに対して、反訴原告の反訴請求は、(一)本訴とは関係のない契約関係に基づく債務不履行の請求、(二)本訴の虚僞文書と関係のない不法行為に基づく損害賠償請求及び(三)商号の使用差止請求等であつて、これらが本訴と何らの関連性もないことは明らかである。

よつて、反訴原告の反訴請求は不適法である。

三 反訴原告の請求原因に対する反訴被告の認否

(債務不履行に基づく損害賠償請求について)

1  主位的請求原因について

(一) 請求原因(一)は否認する。

反訴原告主張の契約(本件契約)は、反訴原告と岩田重朗との間に締結されたものである。

(二) 同(二)は否認ないし争う。

なお、反訴原告が岩田重朗に示達した販売目標額が反訴原告主張のとおりであることは認めるが、仮に反訴原告主張のとおりの契約が反訴被告との間に締結されたものとしても、反訴原告の示達した販売目標額はあくまで目標額にすぎないから、これを達成できなかつたからといつて契約解除の原因となるとしても損害賠償義務を負担しなければならないいわれはない。

2  予備的請求原因について

(一) 請求原因(一)は否認ないし争う。

(二) 同(二)、(三)は争う。

(不法行為に基づく損害賠償請求について)

1  請求原因1は、否認ないし争う。

2  同2のうち、反訴被告が平井忠を所長として北関東営業所を開設したことは認めるが、その余は否認ないし争う。

3  同3は争う。

なお、反訴原告は本件契約が岩田重朗との間で解除された(昭和五一年九月二〇日)後、昭和五三、五四年ごろまでは、東海地方に営業担当者を常駐させることなく販売活動をしていたのに対して、本件契約が存続している間は、岩田重朗は名古屋に腰を据えて三名以上で販売活動をしていたのであるから、昭和五〇年一〇月一日以降、反訴原告の東海地方における反訴原告製品の販売高が減少するのは当然であり、反訴被告の不法行為によるものだとすることは責任転嫁も甚だしい。

4  同4.5は争う。

(商号の使用差止等について)

1  請求原因1は争う。

(一) 反訴原告の商号と反訴被告の商号は、「株式会社」の部分を除外すれば、「光葉スチール」と「コーヨー」であり、外観上の差異は明らかである。また、反訴原告の商号のうち、「スチール」部分はスチール製品を扱うことを示す機能を有するが、反訴被告の商号中にはこのような業種、業態を示す機能を有する部分はない。

なるほど、呼称においては、「光葉」と「コーヨー」は同一であるが、反訴原告の商号(「株式会社」の部分を除く)は「光葉スチール」であり、一部重なり合うにすぎないから、前記差異と総合すれば両商号は判然と区別できる。

(二) 商号の類否は、取引市場において取引者が誤認混同するおそれがあるかどうかで判断するものであるところ、反訴原告、反訴被告が主たる営業目的としているのは学校用スチール製品であつて、その販売方法は店頭で不特定多数の客を相手にするものではなく、学校、建設会社、代理店等の限定された範囲を対象とするもので、その販売も日常的な訪問を何回も繰り返すことによつてはじめて可能になるものである。

したがつて、取引者が反訴原告の商号と反訴被告の商号を誤認混同することはあり得ない。

(三) 右からすれば、反訴原告の商号と反訴被告の商号とは類似していないものというべきである。

2  同2について

(一) 同2柱書は否認する。

反訴被告の販売活動の実情は前記のとおりであり、学校用スチール製品はメーカーの商号だけで販売が可能になるものではない。従つて、反訴原告の信用を利用する意味、利点は何もなく反訴被告の商号使用に不正競争の目的はない。反訴被告が商号を変更したのは、対税上の便宜によるものである。

また、岩田重朗は反訴原告との間の本件契約が存続している間、「光葉スチール(株)名古屋営業所」との営業表示を使用して販売活動をなしており、右契約締結以前における反訴原告の東海地方でのスチール製品の納入実績が学校数にしてせいぜい十数校であつたのに、昭和五〇年九月ごろまでに愛知県内の高校だけでも二百数十校に納入するという実績を挙げている。そして、岩田重朗は反訴原告の従業員として販売活動をしたのではないから、右「光葉スチール(株)名古屋営業所」との営業表示は岩田重朗の商号というべきところ、反訴被告は、右岩田重朗が「光葉スチール(株)名古屋営業所」として培つてきた名声を利用する意図が存したにすぎないのであるから、反訴原告に対する関係で不正競争の目的はない。

(なお、反訴原告は、右「光葉スチール(株)名古屋営業所」なる営業表示を岩田重朗が使用することは承諾しており、また、右営業表示の浸透には何らの役割も果してはいない。)

(二) 同2(一)は否認する。

反訴原告からの強い勧めにより当時、反訴被告の専務取締役であつた岩田重朗が、反訴被告の業務の習得を兼ねて反訴原告と暫定的に取引していたもので、同人は反訴原告の従業員ではなかつた。

(三) 同2(二)は否認する。

岩田重朗は個人として反訴原告と契約し、個人として反訴原告製品を販売していた。

3  同3は争う。

4  同4のうち、反訴原告の設立年月日は認める。反訴原告が東海地方において極めて活発な営業活動を行なつたことは否認する。現在学校で用いられているロツカー、下駄箱等の学校備品の多くが、反訴原告の設計、開発によるものであること、その普及が全国的に首位を占めていることは不知。その余は争う。

5  同5は争う。

四 反訴被告の主張

(不法行為に基づく損害賠償請求について)

反訴原告は、昭和五九年四月一六日の本件第二八回口頭弁論期日において、不法行為に基づく損害賠償の請求として、反訴原告が昭和五三年一〇月一日から同五八年九月三〇日まで被つた損害を追加主張したが、右期間のうち、右口頭弁論期日より三年以前の部分は既に時効にょり消滅している。

反訴被告は右時効を援用する。

(商号の使用差止等について)

1  反訴被告はその商号を変更するにあたり、昭和四九年一二月中旬ごろ、反訴原告の承諾を得ている。

2  このことは、反訴原告が、反訴被告が商号変更をした事実を知りながら(反訴被告は反訴原告に商号変更の挨拶状を出しており、また商号変更後、反訴被告はその振出しに係る手形を何回も反訴原告に交付している。)、本件反訴状を提出するまで何らの異議を述べたことがないことからも明らかである。

3  したがつて、反訴原告の請求は理由がない。

五 反訴被告の主張に対する反訴原告の認否

(商号の使用差止等について)

反訴原告が反訴被告の商号変更を承諾したことは否認する。その余は争う。

第三 証拠関係

本件記録中の書証目録調書、証人等目録調書に各記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  本訴請求事件について

1  原告(反訴被告、以下単に「原告」という。)が陶磁器製品その他の雑貨類の買入れ及び輸出、並びに文房具、学校用スチール製品の販売を目的とする会社であつて、被告(反訴原告、以下単に「被告」という。)と原告は学校用スチール製品の販売業において競業関係にあること、被告が昭和五二年八月ごろ、別紙一ないし三をその内容とする本件各文書を取引先に配布したことは当事者間に争いがない。

そして、原告が本件各文書のうち虚僞である部分として主張するもの(別紙四の虚僞欄記載のもの)が、本件各文書の各内容の一部をそれぞれ要約したものであることは、これを前記本件各文書の内容(別紙一ないし三)と対比することにより明らかであり、かつ、右各虚僞であると原告が主張する部分がいずれも原告の業務等に関するものであることは当事者間に争いがないところ、被告は右部分はいずれも真実であり、正当業務行為である旨主張する(被告の主張/参照)ので、以下右被告主張について判断する。

2  成立について争いのない乙第一号証、第三ないし第七号証、第三二号証ないし第三七号証、証人宮坂三郎の証言により成立を認め得る乙第一八号証、証人宮坂三郎、相良守輝、岩田重朗の各証言(但し、証人岩田重朗の証言のうち後記認定に反する部分は除く)及び被告代表者本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の各事実を認めることができる。すなわち、

(一)  原告代表者岩田重代の弟であり、原告の役員であつた岩田重朗は、昭和四六年頃から、原告の意を受けて、被告の学校用スチール製品の販売を、「光葉スチール株式会社名古屋営業所」の営業表示を用いて個人として行なつていたが、右販売業が有望であつたことから、昭和四七年には原告自身が被告の学校用スチール製品の販売(代理店)をすることとし、原告と被告は大要左記内容の契約(本件契約)を締結したこと。

(1) 原告は、被告製品を愛知県、三重県、岐阜県の三県において販売する。

(2) 原告は、被告製品以外の学校用スチール製品の販売はしない。

(3) 被告は、原告の販売が不成績であると認められるときは、契約を解除することができる。

(二)  原告は、右契約に従い被告製品を販売していたが、その際、営業表示は岩田重朗が個人として販売を行なつていた際に使用していた前記「光葉スチール株式会社名古屋営業所」の表示を使用しており、販売先等に配布するカタログは被告から交付されるものをそのまま使用し(なお、右カタログにおいても「光葉スチール株式会社名古屋営業所」の表示がされている。)、独自にカタログを作成することはなかつたこと。

(三)  原告は、当初、学校用スチール製品については被告製造のもののみを販売していたが、その後、昭和四九年後半頃から北川金属工業株式会社から、継続的に学校用スチール製品の供給を受けてこれを販売するなど、被告以外の製造に係る学校用スチール製品も販売するようになり、昭和五〇年二月一日には、その商号(当時の商号は萬国貿易株式会社)を現商号(コーヨー株式会社)に変更したこと(右商号変更の事実は当事者間に争いがない。)。

(四)  昭和五〇年七月頃に至り、原告が被告以外の製造に係る学校用スチール製品を販売していることは、被告の知るところとなり、被告は同年九月二〇日、原告との間の本件契約を解除したこと。

(五)  右契約解除後も原告は学校用スチール製品の販売を継続したが、原告の販売する製品については、同年一〇月に至るまで独自のカタログを作成することなく、また、前記被告から交付を受けて従前販売先等へ配布した被告のカタログを回収することもなかつたこと(なお、昭和五〇年一〇月に原告の作成したカタログ中には、被告カタログ((工作説明書))から、被告の了承を得ることなく、そのまま「波型歯加圧加工図」及び「防錆塗装図」が転載されている。)。

(六)  その後、原告は、従前被告の従業員であつた平井忠を所長として北関東営業所を開設し、また同様に被告の従業員,であつた相良守輝を所長として東京営業所を開設するなどして、東海地方のほか関東地方、近畿地方等にも営業区域を拡大し、原告と被告の商号が類似していること(このことは後に説示するとおりである。)等により各地で原告と被告の誤認、混同を生じたこと。

以上の事実が認められる。

証人岩田重朗及び原告代表者本人は、被告との間で学校用スチール製品の販売に関して契約をなしたのは、原告ではなく岩田重朗個人である旨各供述し、前掲乙第一号証(契約書)の記載も右各供述に副うものであるが、証人岩田重朗自身、右販売の経理はすべて原告で行ない、その利益は原告に帰属し、被告に対する仕入代金の支払いはすべて原告が決済している旨供述するのであつて、これに、前記のとおり岩田重朗が光葉スチール株式会社名古屋営業所という営業表示を使用して販売活動をしており、その営業表示をそのまま継続して使用したいとの意図が原、被告双方に存したことが、被告代表者本人尋問の結果により窺われること及び成立について争いない乙第八ないし第一〇号証を併せて考えると、証人岩田重朗及び原告代表者本人の各供述はにわかに措信できず、前掲乙一号証(契約書)における当事者の表示は、実態にそぐわないものであり、原告が「光葉スチール株式会社名古屋営業所」という営業表示を使用する目的で殊更にされたものとみるのが相当である。他に前記認定を左右するに足りる証拠はない。

3  そこで、右事実を前提として、以下、別紙四の虚僞記載のものについて、同別紙記載の順序に従つて検討する。

(一)  「原告は、製作工場等は全く持たずどこで製作されるものか不明」との部分について

証人岩田重朗の証言及び原、被告各代表者本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、本件各文書が配布された当時、原告は、原告自身で学校用スチール製品を製造していたのではなく、主として北川金属工業株式会社の製造した学校用スチール製品を原告の商標で販売していたこと、被告も、本件各文書作成当時、原告が主として北川金属工業株式会社の製造した学校用スチール製品を販売していることは知悉していたことの各事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。

右事実かちすれば、右部分のうち、「原告は製作工場を全く持た」ない4旨の部分は、真実であるというべきであるが、その余の部分、すなわち「どこで製作さこれるものか不明」との部分は虚僞であるというべきである。

被告代表者本人は、原告は北川金属工業株式会社のほか、他の会社製造の学校用スチール製品を販売していたので、具体的にどこに入した製品がどこで製造されたものかは被告に分からないので、被告にとつては不明である旨供述するが、前記のとおり北川金属工業株式会社で製造しているものが存することは被告において知悉していたのであつて(このことは被告代表者本人も供述するところである。)、かつ、右部分を、右被告代表者の供述する趣旨に理解することは困難であるから、右供述は前記判断を左右するものではない。

もつとも、右部分自体は、その主体(その主体が被告を指称するものか、はたまた学校用スチール製品の需要者、取引者を指称するものかは右部分からは判然としないが)にとつて、原告の販売に係る学校用スチール製品の製造者が誰であるか(或いはどこで製造したか)が不明であることを述べているに過ぎないから、これを、不正競争防止法一条一項六号にいう「事実」とみるのは困難であるが、右部分が本件各文書の他の部分と相俟つて原告の販売する製品が品質の劣るものであるかの如き印象を与えるものであることは明らかであり、前記のとおり右部分は少なくとも被告にとり虚僞であるから、右部分を含む本件各文書を第三者に配布することは、原告の営業に対する誹謗、中傷行為であつて、民法上の不法行為に該当するものといわざるを得ない。

(二)  「愛知県から粗悪品の指摘を受ける。」との部分について

本件全証拠によつても、右事実を認めるに足りる証拠はない。

すなわち、被告代表者本人は、原告(岩田重朗)が光葉スチール株式会社名古屋営業所として納入した学校用スチール製品について愛知県の担当者からクレームをつけられ、被告名義の陳謝状を愛知県知事宛に提出した旨供述するが、具体的に被告代表者が原告の納入したものの中で粗悪品であると指摘供述する春日井西高校に納入した製品について、原告若しくは被告において修理又は交換をなした事実を本件において窺うことはできず、他に右被告代表者の供述を支持するに足りる証拠も存しない(右陳謝状の写し、若しくは控に類するものも本件において提出されてはいない。)のみならず、成立について争いのない甲第八号証の一ないし五によれば、被告は昭和五〇年以降同五四年度に至るまで一貫して愛知県において指名競争入札に参加する資格を有し続けていたことが認められるのであつて、粗悪品を納入した業者が指名競争入札に参加する資格を保持し続けることは通常考え難いことからして、右被告代表者の供述は直ちに措信し難く、他に右事実を認めるに足りる証拠が存しないことは右説示のとおりである。

そうすると、右部分は虚僞であるというべきである。

(三)  「岩田氏は当社カタログで販売し乍ら、市中の一般粗悪品を安く仕入れ、光葉製品として僞つて納入した」との部分について

被告代表者本人は、原告が被告との間の本件契約が解除されたのち、京都府に三吉という会社が被告以外の製造に係る製品を納入しようとして同府から拒絶された事実及び、加古川市に東洋ロツカーという会社が被告以外の製造に係る製品を納入しようとして同市から拒絶された事実が存することを右部分が真実であることの例として供述し、証人牛越洋介もまた同様の供述をするが、被告代表者本人尋問の結果により成立を認め得る乙第一五号証及び原告代表者本人尋問の結果によれば、右事例はいずれも被告製品が指定商品となつているところ、納入業者(三吉及び東洋ロツカー)が原告と被告を誤認して原告に注文を出そうとしたものであること、結局、右両事例とも最終的には被告製品が納入されたことの各事実が認められるのであり、右以上に積極的に原告が納入業者らと共謀して被告製品と僞つて被告以外の製造に係る製品を京都府や加古川市に納入しようとした形跡は窺うことはできない。そして、他に、右両事例のほかに被告製品と僞つて原告が被告以外の製造に係る学校用スチール製品を販売しようとし若しくは販売したことを認めるに足りる証拠はない。また、右部分のうち「岩田氏の納入した製品が一般粗悪品である」旨の部分であるが、右のとおり被告代表者本人の供述する京都府の例及び加古川市の例については、いずれも結局被告製品が納入されたのであるから、右部分が虚僞であることはもとよりのことであるが、これを原告が販売した被告以外の製造に係る学校用スチール製品一般についてみても、証人岩田重朗の証言及び被告代表者本人尋問の結果によれば、被告製品には大部分、新日本製鉄製のボンデ鋼板(鋼板の製造時に亜鉛を表面に付着させてある鋼板)が使用されていること、ボンデ鋼板は単に鉄板に亜鉛メツキ(ボンデ処理)を施したものに比べると硬度、防錆能力が優れていること、原告が販売した被告以外の製造に係る学校用スチコル製品には、ボンデ鋼板は使用されていないことの各事実を認めることはできるが、右ボンデ鋼板を使用していない製品が直ちに粗悪品であると認めるに足りる証拠はなく(ボンデ鋼板とボンデ処理鋼板の違いは帰するところ、鋼板の表面に存する亞鉛層の厚みの違いであり、ボンデ処理鋼板を使用したスチール製品が使用に堪えないものでないことは弁論の全趣旨に徴して明らかである。)、他の部分において被告以外の製造に係る学校用スチール製品が被告製造のそれに比して、品質において劣悪なものであることを認めるに足りる証拠は何ら存しない。

したがつて、右部分は虚僞であるというべきである。

(四)  「その後、岩田兄弟はコーヨー株式会社なるものを設立し・・・・当社の信用を利用している」旨の部分について

右部分は、本件各文書のうち別紙二を内容とする文書に記載されている部分であるところ、別紙二の文章からすると、「コーヨー株式会社」すなわち原告は昭和五〇年九月以降に設立されたものであるとの趣旨に解せられるが、原告は昭和五〇年二月に商号変更し、現商号(コーヨー株式会社)となつたものであることは前記のとおりであるから、右部分のうち、岩田兄弟がコーヨー株式会社を設立した旨の部分は、その時期の点及び真実は商号変更であり新たに原告を設立したものでない点において虚僞である。

しかしながら、右の如き会社の経歴に関する事実は、それ自身を当該会社が信用に欠けるものであることの根拠(設立以来日が浅く、会社の経営基盤が弱体である等)として陳述する場合であれば格別、そうでない場合には直ちに営業上の信用を害する事実(不正競争防止法一条一項六号参照)ということはできないし、民法上の不法行為に該当すべき程度の不法性を有するとみることもできない。

次に被告の信用を利用している旨の部分について考えるに、前記2において認定の経過及び被告と原告との商号が類似している事実に徴すれば、原告は被告と類似する商号を使用することにより自己の営業上の利益を図る目的(すなわち商法二〇条一項にいう「不正競争の目的」)が存したものとみるべきであるから、右部分は真実であるというべきである。

この点、原告代表者は原告が商号変更をした理由について対税上の目的によるものである旨供述するが、原告が被告と類似する商号(若しくは、従前原告が営業表示として使用していた光葉株式会社名古屋営業所との表示と類似する商号)に商号変更することにより、いかなる対税上の利益が生ずるかは首肯し得る説明がなく、また何らかの利益が生じることを想定することも困難であるから、右供述は採用しない。他に前記判断を左右するに足りる証拠はない。

なお、原告は被告の反訴請求に対する主張として、原告の商号変更は岩田重朗の培つてきた「光葉スチール(株)名古屋営業所」としての名声を利用する意図であつて被告に対する不正競争の目的はない旨主張する(反訴原告の請求原因に対する反訴被告の認否の((商号の使用差止等))2(一)参照)が、右原告主張の営業表示は、もともと被告製品を販売するうえで被告との関連を明らかにする目的で選定、使用したものであることは、前記2において認定の事実からして明らかであつて、かつ、右営業表示自体、被告とは別個独立の営業主体を表示したものとみることは困難である(本件全証拠によつても、取引者及び需要者において、被告と光葉スチール(株)名古屋営業所すなわち原告とが別個の営業主体であることが明確に認識されていたことを認めることはできない。)。そして、このような関係にある以上、右営業表示の使用により生じた名声、信用等が被告に帰属することとなることは、むしろ当然というべきであり、そうである以上、原告の前記主張が失当であることは多言を要しないところである。

(五)  「当社のカタログを引用、背信を重ねる。

当社のカタログや工作説明書をそのまま引用して、自己のカタログに載せ、自己のカタログでまずい時は手持していた当社カタログを配布」との部分について

前記2において認定の事実すなわち被告カタログ(工作説明書)から「波切歯加圧加工図」及び「防錆塗装図」がそのまま転載されている事実からすれば、右部分のうち被告のカタログや工作説明書をそのまま引用して自己のカタログに載せた旨の部分は真実というべきであるが、その余の部分については、これを真実と認めるに足りる的確な証拠はない。なるほど、原告が被告から被告のカタログの交付を受けていたことは前記2において認定のとおりであり、本件契約が解除された当時、原告が被告のカタログを相当部数所持していたであろうことは想像に難くなく、原告独自のカタログが製作されるまでの間、原告が被告のカタログを販売先に示して営業をした可能性はこれを否定することはできないが、原告が独自のカタログを作成したのちにも、なお被告のカタログを配布したこと(右部分は右以外の趣旨に理解することはできない。)を認めるに足りる証拠は何ら存しない。また、右部分のうち「当社のカタログを引用、背信を重ねる。」との部分は、前記工作説明書からの転載が被告に対する不法行為等の何らかの違法行為を構成するものと認めることはできないし(右転載部分である「波切歯加圧加工図」及び「防錆塗装図」は、いずれも学校用ロツカーの構成材料である鋼板についての説明図であつて、右各図に説明の鋼板を使用していることが、即、被告製品のみを連想せしめるものと認めるに足りる的確な証拠は何ら存せず、そうである以上、右各図のカタログ中における位置、体裁等からして、右各図を転載したことにより特段、被告製品と原告の学校用スチール製品とを誤認、混同する可能性が生じたものとは、到底認め難い。そうとすれば、右各図を転載したことが、被告に何らかの損害を与えたものとみることはできないから、右は不法行為に該当するものでなく、他に原告に被告に対する何らかの義務違反を認めるに由ないから、結局右転載を背信行為とする評価は誤りであるというべきである。)、他にカタログに関して原告に何らかの違法行為が存した形跡を窺うことはできない。

(六)  「岡山県吉備小学校納入に際し、当社の図面を用いた。粗悪品で検査合格もむずかしかつた。」との部分及び「松山日赤の件 当社の図面を用いた。粗悪品である。」との部分について

証人宮坂三郎、同牛越洋介の各証言及び被告代表者本人尋問の結果によれば、岡山県吉備小学校及び松山日赤については、被告も受注活動をしており、そのため予め図面を製作して各販売先に提出していたが、結局、右各販売先には原告の製品が納入されたことが認められ、これに被告代表者本人尋問の結果により成立を認め得る乙第一九号証(平井忠作成の証明書)及び原告代表者本人尋問の結果によれば、右各納入当時被告の大阪営業所長であつた平井忠が被告とトラブルを起こして松山日赤の納入業者である岩本商会に原告を紹介し、原告の製品を松山日赤に納入させたことが認められることを併せ考えると、原告が、既に各販売先に提出されていた被告の作成した図面を流用してスチール製品を製造したことを推認することができる。右認定を左右するに足りる証拠はない。したがつて、右各部分のうち、原告が被告作成の図面を用いた旨の部分は、これを真実というべきであるが、その余の各部分についてはこれを認めるに足りる証拠はない。

被告代表者本人は、岡山県吉備小学校へ原告の製品を納入した業者(熊平金庫岡山営業所)及び松山日赤の工事請負業者(熊谷組)、設計業者(たいけん設計)から粗悪品と聞いている旨供述するが、右供述を支持するに足りる客観的証拠は何ら存しないのみならず、何故にその製造者でないことを知悉しているはずの熊平金庫が被告にそのような事実を告知しなければならないのか、また工事請負業者、設計業者が納入業者である岩本商会でなく被告にそのような事実を告知しなければならないのか理解に苦しむのであつて、これに原告代表者本人尋問の結果により成立を認め得る甲第七号証(岩本商会作成の書簡)及び同尋問の結果を加えると、被告代表者の前記供述はたやすく措信し難く、右供述は採用しない。

(七)  「(株)三吉の件 三吉に落札させた 当社製品の如く見せかけて納入しようとした。」との部分について

右部分が虚僞であることは、前説示(3(三)参照)のとおりである。

(八)  「茨城県はコーヨー(株)の採用を拒否」との部分について被告代表者本人は、右部分について、原告と被告の関係がよく分からず混乱してきたので、県の担当者が原告と被告とを購入の際に間違わないように県の出先機関あるいは工事請負業者等の会合の際に注意を促した事実が存したとの趣旨である旨供述するが、右供述が仮に真実であるとしても、右部分を右趣旨に理解することは困難であつて、右部分は本件各文書のうち別紙二の一部分であるところ、別紙二の内容からすれば、右部分は茨城県は原告が被告製品と僞つて自己の粗悪な製品を納入しようとするような業者であるから指定業者から除外した、ないし、原告の納入しようとした製品の受入を拒否した等の趣旨に理解する以外にはないのであるから、右被告代表者本人の供述をもつて右部分を真実と認めることはできないし、他に右の如き事実が存したことは本件において全く窺われないのであるから、右部分は虚僞であるというべきである。

〔一〕 4 以上の検討の結果からすれば、別紙四の虚僞欄記載のもののうち、「愛知県から粗悪品の指摘を受ける」(同別紙番号2)、「岩田氏は当社カタログで販売し乍ら、市中の一般粗悪品を安く仕入れ、光棄製品として僞つて納入した」(同別紙番号3)、「岡山県吉衞小学校納入に際し、当社の図面を用いた。粗悪品で検査合格もむずかしかつた。」(同別紙番号6)、「松山日赤の件 当社の図面を用いた。粗悪品である。」(同別紙番号7)、「(株)三吉の件 三吉に落札させた

当社製品の如く見せかけて納入しようとした」(同別紙番号8)、「茨城県はコーヨー(株)の採用を拒否」(同別紙番号9)の各部分はいずれも虚偽であり、右各虚偽部分はいずれも原告の宮業上の信用を害する虚偽の事実というべきことは明白であるから、右各虚偽部分の記載された本件各文書を配布する行為が不正競争防止法一条一項六号に該当するものであることは明らかである。

(なお、「原告は、製作工場等は全くもたず、どこで製作されるものか不明」との部分-別紙四番号1-のうち、「どこで製作されるものか不明」との部分、「その後岩田兄弟はコーヨー株式会社なるものを設立し・・・・当社の信用を利用している」-同別紙2-のうち、「その後岩田兄弟はコーヨー株式会社なるものを設立し」との部分はいずれも虚偽であるが、右虚偽部分の陳述、流布が不正競争防止法一条一項六号に該当するものでないことは前説示のとおりであるところ、右のうち、「どこで製作されるものか不明」との部分を記載した本件各文書を配布することが不法行為に該当することも前説示のとおりであるから、以下、右部分については、前記各虚偽部分と一括して判断することとする。また、「当社のカタログを引用、背信を重ねる 当社のカタログや工作説明書をそのまま引用して、自己のカタログに載せ、自己のカタログでまずい時に、手持していた当社カタログを配布」との部分-同別紙番号5-のうち、「当社のカタログや工作説明書をそのまま引用して自己のカタログに載せ」た旨の部分をくその余の部分も虚偽であり、右部分については前記各虚偽部分と同様に不正競争防止法一条一項六号に該当するものであるから、この部分も前記各虚偽部分と一括して判断することとする。)。

被告は、本件各文書の配布は正当業務行為である旨主張するところ、なるほど、前記2において認定の事実からすれば、原告は、当初、被告との間で締結した学校用スチール製品の販売に関する契約(本件契約)の約旨に反し、被告以外の製品を販売し、被告との契約が解消された後にも配布済みの被告のカタログを回収することもなく、被告と類似する商号を使用するなど、被告において原告の営業活動は商業道徳に反するものと考え、或いは被告と原告との違いを取引者、需要者に説明、周知させる必要が存したことは、十分これを肯認することができる。しかしながら、右の如き状況に存するからといつて直ちに相手方のなす営業活動の誹謗、中傷にわたる虚偽事実の陳述が許されるものでないことはもとよりのことであつて、本件各文書全体の内容及び前記虚偽部分からすれば、本件各文書の配布が正当業務行為の範囲に含まれるものとは、到底、みることができない(このことは、本件各文書を配布する際に一般には配布することのないよう注意を加えていることにより何ら左右されるものではない。)。

5(一)  そこで、本件各文書の配布により原告の被つた損害について検討する。

まず、原告は、本件各文書の配布により別表一、二記載の各学校に対して商品の売込みが不可能となつた旨主張するが、右各売込みが不可能になつた原因が本件各文書の配布に存する(換言すれは、右各売込みにより得べかりし利益が喪失したことと、本件各文書の配布とが相当因果関係の範囲内に存する)というためには、右各売込みが成立する蓋然性が相当高度に存しなければならないものと解されるところ、右を認めるに足りる証拠は本件においては何ら存しない。すなわち、証人相艮守輝は、千葉県千葉市若松町所在の若松高校について、本件各文書の配布により商談不成立となつたかの如く供述するが、被告の販売価格の方が原告のそれよりも相当安かつたことは同人の供述するところであり(このことは証人宮坂三郎の証言によつても認められる。)、右の事情にある以上、右若松高校に対する売込みが不成功に終つた原因が本件各文書の配布のみに存するということができないことは明らかである。他には本件において、別表一、二記載の各学校に対する売込みが成立する寸前にあつたこと或いは原告の売込み活動が他の者に比して相当程度優位にあつたことを認め得るに足りる的確な証拠はない。

したがつて、本件各文書の配布により原告の被つた損害はすべて、原告の業務上の信用低下という無形損害として評価されることとなる。

(二)  本件各文書の配布先について考えるに、被告代表者本人は本件各文書を京都府、兵庫県、茨城県、奥村組、戸田建設、北野建設及び野濃設計事務所等に配布した旨供述し、(同人はまた、配布先は二、三社に過ぎないともいうが、右供述に照らせば、配布先が二、三社に過ぎないとは到底考えられない。)、また、原告と商談が競合した場合は売込み先に交付するよう指示している旨も供述していること、前記認定のとおり、原告と被告は、少なくとも関東地方、東海、北陸地方、近畿地万、中国、四国地方においてかなり営業活動が競合していること、本件各文書は、その性質上、第三者からはその配布数、配布先の正確な把握は困難であることを併せ考えると、本件各文書の配布先は右各地域を併わせると相当数にのぼるものと認めるのが相当である。

(三)  右の本件各文書の配布数及び前記認定の本件各文書中、虚偽部分の占める割合とその内容を勘案し、更に、被告本人尋問の結果により成立を認め得る乙第二七ないし二九号証及び証人岩田重朗の証言によれば、本件各文書配布当時(昭和五二年八月ごろ)における原告の学校用スチール製品の販売高が約一億八〇〇〇万円から二億円前後であつて、粗利益率が三〇パーセントないし四〇パーセント程度であつたことを総合考慮すると本件各文書配布により原告の被つた無形損害は、金五〇〇万円をもつて相当と認める。

6  よつて、被告は、原告に対し、民法七〇九条若しくは不正競争防止法一条一項六号により金五〇〇万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和五二年一二月一七日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いをなす義務があるというべきである。

二  反訴請求について

1  まず、原告の本案前の主張について判断するに、被告の反訴請求のうち、(不法行為に基づく損害賠償請求)及び(商号の使用差止等)は、本訴請求の防禦方法と牽連性を有するが、(債務不履行に基づく損害賠債請求)は、本訴請求若しくはその防製方法と牽連性を有するということはできない。

すなわち、原告の本訴請求は、被告が別紙四記載の各虚偽部分を含む本件各文書を配布する行為が不正競争防止法一条一項六号若しくは民法七〇九条に該当することをその請求原因とするものであり、被告は、右請求に対する防禦方法として、本件各文書の右各虚偽部分の内容が真実であることを主張しているところ、反訴請求のうち(不法行為に基づく損害賠償請求)及び(商号の使用差止等)の各請求は、いずれも本件各文書の右各虚偽部分の内容たる事実の一部が存在することをその請求原因とするものであることは、被告の主張に数して明らかであるから、これが本訴請求の防禦方法と牽連するものというべきことは当然である。一方、反訴請求のうち、(債務不履行に基づく損害賠償請求)は、原告が、被告との間で昭和四七年三月四日に締結した専属的販売契約(本件契約)により負担した債務である販売目標額達成義務を履行しなかつたことによつて被告が喪失した得べかりし利益の賠償請求(主位的請求)及び右契約により原告が負担した債務である被告製品以外の製品を販売しない義務に違反したことによつて被告が喪失した得べかりし利益の賠償請求であるところ、右各請求をなすに至つたのは、原告が被告との間に本件契約を締結しながらその約旨に反して被告製品以外の製品を販売し、被告との契約が解除されるや被告と競業をするようになつたことにその遠因が存することは前説示のところから容易に推認することができ、その点で右各請求は右紛争の延長線上に存すると考えられる本件各文書の配布と軌を一にするものということはできるが、本訴請求は、直接には、本件各文書に記載の各部分(別紙四に記載のもの)が虚偽であることをその請求原因とするものであり、右各部分は本件契約に関する原告の債務不履行については何ら言及していないのであるから、右程度の共通性をもつて本訴請求又はその防禦方法との間に牽連性が存するものとは到底解し難い。このことは、原告の本訴請求原因に対してする被告の主張と被告の反訴請求原因のうち(債務不履行に基づく損害賠償請求)の原因との間に何ら共通するところがないことからも明らかである。

したがつて、被告の反訴請求のうち債務不履行に基づき損害賠償を求める訴えは反訴の要件を欠く不適法なものであり、却下されるべきものである(最高裁判所第一小法廷昭和四一年一一月一〇日判決 民集二〇巻九号一七七三頁参照)が、その余の反訴請求は適法であるから、以下、右各反訴請求について本案の判断をする。

2  (不法行為に基づく損害賠償請求)について

被告は、原告の不法行為として、(一)不正競争の目的をもつてその商号を原告の商号と類似する商号に変更し、(二)学校用スチール家具のカタログについて被告と類似するカタログを作成、使用し、或いは被告のカタログを使用して、被告の販売活動と誤認、混同を生ぜしめる販売活動をしたこと、(三)被告の従業員であつた平井忠が被告のセールスマンとして受注していたものを平井忠と共謀して横取り受注して販売し、被告が平井忠を解雇したのち同人を所長として北関東営業所を開設したことを各主張するので検討するに、

(一)  原告が不正競争の目的をもつてその商号を被告の商号と類似する商号に変更したものであることは、前説示のとおりである(前記3(四)参照。商号が類似するものであることは後に説示するとおりである。)。

(二)  次に、原告が学校用スチール家具のカタログについて被告カタログ(工作説明書)から「波切歯加圧加工図」及び「防錆塗装図」をそのまま転載して自己のカタログを作成したこと、原告は、被告と原告との間で締結された本件契約が解除された昭和五〇年九月二〇日までの間に販売先等に配布した被告のカタログを右契約解除後においても、これを回収することなく、同年一〇月頃までは独自のカタログを作成していなかつたこと(前記3(五)参照)、原告と被告の営業は各地で誤認、混同を生じたこと(削記2参照)の各事実は認められるが(なお、証人岩田重朗、原告代表者本人は、いずれも、被告と原告の販売活動に、誤認、混同が生じたことはないかの如き供述をなすが、前記認定の(株)三吉及び東洋ロツカーが原告と被告を誤認していた事実(前記3(三)参照)に徴し、右各供述はいずれも採用しない。)、前記契約解除後に被告のカタログを使用して販売活動をなしたことを認めるに足りる証拠が存しないこと(前記3(三)参照)も前記のとおりである。

(三)  また、松山日赤にスチール製品を納入するに際し、当時被告の従業員であつた平井忠が、被告も松山日赤に対する販売活動をしていたのにもかかわらず、敢えて納入業者である岩本商会に原告を紹介したことは前記認定のとおりである(前記3(六)参照)が、他に原告が平井忠と共謀して、被告の従業員として平井忠が受注していたものを、原告が横取りした事実を認めるに足りる証拠はない。そして、平井忠が被告を解雇されたことは、弁論の全趣旨により明らかであるところ、その後、原告が平井忠を所長として北関東営業所を開設したことは前記のとおりである。

そこで、以上の事実関係を前提として考えるに、まず、原告が不正競争の目的をもつてその商号を被告の商号と類似する商号に変更し、その結果として被告と原告の販売活動に誤認、混同を生ぜしめたことが原告の不法行為に該当するものであることは明らかであるが、その余の原告の各行為が不法行為に該当するものということはできない。

すなわち、まず原告が学校用スチール家具のカタログについて被告カタログ(工作説明書)から「波切歯加圧加工図」及び「防錆塗装図」をそのまま転職して自己のカタログを作成した点についてみるに、被告は、原告が被告のカタログと類似するカタログを使用したことによつて被告と原告との販売活動に誤認、混同を生じた旨主張するが、右が不法行為に該当するものでないことは前説示(前記3(五)参照)のとおりである。

また、本件契約が解除された後、原告が被告のカタログを回収しなかつたことが、不法行為に該当しないものであることは多言を要しないところであつて、このことは、原告が、被告と原告との間の誤認、混同を生ぜしめる目的で、回収を図らなかつたとしても、原告に回収の義務が存しない以上、同様である。更に、平井忠が岩本商会に原告を紹介した点については、平井忠において、被告の従業員としての義務違反が存することは明らかであるが、右義務違反をなすにあたり、原告が平井忠をそそのかすなどした等の事情を窺うべき証拠は、本件において一切存せず(のちに、平井忠が原告の従業員となつたことを根拠として右を推認することはできない。)、また、松山日赤(若しくは岩本商会)において被告と原告とを誤認、混同したものとみるべき事情も本件においては窺われないのであるから(原告が被告の図面を流用してスチール製品を製造して松山日赤に納入したことは前認定のとおりであるが、このことは松山日赤若しくは岩本商会において被告と原告とを誤認、混同していたことを意味するものとは解し難い。)、少なくとも原告と岩本商会との間の取引は、平井忠の紹介という契機はあるにせよ、公正な取引というべきであつて、これが被告と松山日赤との間の債権関係を殊更に侵害する意図の下に、公序良俗違反等の不法な態様にて行なわれたものとは到底みることができない。したがつて、右も不法行為に該当するものではない(なお、被告が解雇した従業員である平井忠を、そののち雇用することが不法行為に該るものでないことは当然である。)。

そこで、原告がその商号を変更したことによる被告の損害について考えるに、被告は原告の不法行為がなければ、その現実の販売高を大幅に超える売上げ(各年につき合計金一億一〇〇〇万円)を獲得することができた旨主張するが、右を認めるに足りる証拠は何ら存しない。なるほど、被告代表者本人尋問の結果により成立を認め得る乙第二七号証ないし第二九号証によれば、原告は、昭和四九年以降、学校用スチール製品を毎年約一億八〇〇〇万円程度売上げていることが認められるが、右各号証によつても原告の右売上げ高がその商号変更により顕著に増加したとみることはできないのであつて、原告の売上げ高そのものを被告の損害とみることができないことはもとよりである。そして、被告代表者本人尋問の結果によれば、被告は原告との前記継続的販売契約を解除したのち、昭和五三、四年に至るまで営業員を東海地方に常駐させて営業活動をなすものでなかつたことが認められるのであるから、原告との右契約が存続していた当時の原告の販売実績を基準として損害を算定することができないことも明らかであつて、要するに、本件において、原告の商号変更により被告の被つた損害を実額で算定することは不可能というべきである。したがつて、被告の前記主張は失当というべく、以下、被告の無形損害について考えるに、本件において認定した商号変更に至る経緯及び本件にわれた原告、被告双方の販売実績、利益率等を総合勘案すると、原告の商号変更により被告の被つた無形損害(昭和五〇年二月一日以降本件反訴状送達の日である昭和五三年九月二日までの期間について)は、金三〇〇万円をもつて相当と認める。

〔二〕 したがつて、原告は被告に対し、金三〇〇万円及びこれに対する不法行為の日の後である昭和五三年九月三日から支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による金員を支払うべき義務がある。

なお、被告は、原告の不法行為により被つた有形損害(得べかりし利益の喪失)については、昭和五九年四月一六日の本件第二八回口頭弁論期日において昭和五三年一〇月一日から同五八年九月三〇日まで被つた損害を追加主張したが、無形損害については、右の如き追加主張をしていない。

したがつて、被告の無形損害についての損害賠償請求は、本件反訴状送達時までに発生した損害の賠償のみを求めているものと解さざるを得ないから、昭和五三年九月三日以降の無形損害については、これを判断しない。

3  (商号の使用差止等)について

(一)  被告の商号が「光葉スチール株式会社」であり、原告の商号が「コーヨー株式会社」であることは、本件記録上明らかであるところ、右両商号は、その主要部分において類似することが明らかである。すなわち、被告の商号の主要部分は「光葉」であり、原告の商号の主要部分は「コーヨー」であるところ、右両部分とも発音は「こーよー」であり称呼において一致するものである。

原告は右主要部分が漢字表記か片仮名表記かの差異を有すること、被告の商号中には「スチール」とのスチール製品を扱う業態ないし業種であることを示す部分が存することを各指摘するが、右のとおり称呼において一致する以上、右両主要部分が漢字表記か片仮名表記かの差異を有することは、原告と被告の両商号が類似することを否定する根拠となるものではない。また、被告の商号中に「スチール」との部分が存することについては、一般に右の如き部分は当該商人の業種若しくは業態を示すものであるところ、右の如き業種若しくは業態を示す部分は、他の部分に比して当該商人を識別する標識としては重要ではないから、右部分を主要部分に含めて両商号の対比(類否判断)を行なうことは適当ではない。したがつて、右原告の主張はいずれも採用しない。

〔三〕 (二) そうすると、原告と被告の両商号は類似するものというべきところ、原告が不正競争の目的をもつて右被告の商号に類似する商号に商号変更をしたことは前説示のとおりであるから、被告は原告に対して、商法二〇条一項によつて、原告の「コーヨー株式会社」なる商号の使用差止めを求め得るというべきである。

原告は現商号に変更するにあたつては被告の承諾を得ている旨主張し、原告代表者本人もこれに副う供述をなすが、右供述は被告代表者本人尋問の結果に照らしこれを採用しない。他に右原告の主張を認めるに足りる証拠はない。原告は、被告に商号変更の挨拶状を出し、商号変更後原告振出しに係る手形を被告に交付したのにもかかわらず、被告において特段異を述べていないことを被告の承諾を推認すべき根拠として主張するが、前説示のとおり原告の現商号と被告の商号は類似するものであるから、原告に対し右類似商号の使用を承諾するか否かは被告にとつても重大な問題であるはずであること、被告にとつては原告が商号変更することにより格別利益を受けるとも考え難いこと(前記2のとおり原告は既に「光葉スチール(株)名古屋営業所」との営業表示をもつて営業をなしている。)、前説示のとおり原告の商号変更が不正競争の目的によるものであること、以上の各事情からすれば、被告が原告の商号変更の申し出に対し、被告内部において原告の商号変更により被告の受ける利益、不利益を考慮してこれに対応するなりの反応を示すことなく漫然これを承諾することは通常考え難いところである。しかるに、本件全証拠によつても右の如き事情は全く窺われないのであつて、原告の商号変更に関して原、被告間で何らかの文書が作成せられた形跡もないのである。一方、原告の商号変更時には未だ本件契約が存続中であり、原告と被告が協調関係にあつたことからすれば、被告が原告の商号変更の事実を知つたならば直ちに異議を述べるのが当然であるともいい難いのであるから、右原告主張の事情の存在から直ちに被告の承諾を推認することはできないといわざるを得ない。

したがつて、右原告の主張は採用しない。

(三)  ところで被告は、不正競争防止法一条一項二号、一条の二第三項に基づき、原告に対して謝罪広告をなすべきことを求めているので、検討するに、被告の商号が本法施行の地域内に於て広く認識せられているものであることを認めるに足りる的確な証拠は存しない。なるほど、被告代表者本人壽問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被告は学校用スチール製品のメーカーとしては十分の経歴を有していること、全国的に営業所、代理店を有し、その売上げもかなりの額にのほることが認められ、本件証拠上に顕われた範囲でも愛知県、京都府、加古川市等において指名業者となつていることは前記のとおりであり(但し、原告の商号変更当時もそうであつたかは不明である。)、これらからすれば、被告の商号は広く認識されているものと考えられなくもないが、原告の商号変更当時の学校用スチール製品の市場規模、同業者の数、被告の販売活動に投入した努力、費用等の明らかでない本件においては、右程度の事由をもつて被告の商号が広く認識されたものであることを肯認することはできない。

〔四〕 そうすると、前記法条を根拠とする被告の謝罪広告の請求は失当である。

三  結論

以上の次第であるから、原告の本訴請求は主文第一項掲記の限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当としてこれを棄却する。また、被告の反訴請求については、債務不履行に基づき損害の賠償を求める訴えは、主位的請求、予備的請求とも不適法であるから、これを却下し、その余の各請求のうち、不法行為に基づく損害賠償請求は主文第四項掲記の限度で理由があるから、これを認容し、その余は失当としてこれを棄却することとし、原告の商号使用の差止めを求める請求は理由があるから、これを認容し、謝罪広告を求める請求は失当としてこれを棄却することとする。

よつて、訴訟費用について、民訴法八九条、九二条本文、仮執行の宣言について同法一九六条を各適用し、被告の仮執行免脱宣言の甲立については相当でないからこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加藤義則 裁判官 高橋利文 裁判官 締引穣)

別紙一

最近当社名に類似したコーヨー株式会社なるものがメーカーと称しパンフレツト等をバラ蒔いておりますが、これは元当社営業に従事しておつた者達が作つた社名であつて製作工場等は全くもたず、どこで製作されるものか不明であり、当社とは全く関係のないものであります。

別紙の様にコーヨー株式会社が当社と類似名称で営業していることについての説明書をお送りします。この説明書はカタログの様に一般に配布することのない様只コーヨー株式会社とかち合う時に相手先へ御説明下さい。茨城県に当社から提出した文書も参考に一部お送りしますが、これは貴社セールスの方が頭に入れる知識としておつかい下さい。

以上

別紙二

光葉スチール株式会社

コーヨー株式会社

の相違について

趣旨

類似会社名の為、混乱と照会が相次いでいますので、官庁、建設会社の御要望もあり、光葉スチール株式会社本社(長野)とコーヨー株式会社本社(名古屋)の相違と経過について、ここに説明を致します。

当社概要

光葉スチール株式会社(当社)は、学校用スチール家具の専門メーカーとして発足し、現在学校で用いられているロツカー、下駄箱等数多くの学校備品は当社の設計開発によるものが多く、その普及は全国的に首位を占めて居ります。

当社直名古屋営業所

さて、当社は各地に営業所を設けていますが、特に名古屋営業所は東海地方に於て極めて活発な普及活動を行い、昭和四十六年迄には四〇〇余校の御採用を頂き、安定した基盤を築きました。

コーヨー(株)岩田氏の前身は

四十七年、知人の岩田重代、重朗、重臣、寅男氏の四兄弟の希望により、当社品を専売することを主条件として、この営業所を同人等の請負契約による経営としました。

愛知県から粗悪品の指摘を受ける

然るに五十年七月、突然愛知県から本来の光葉製品と異る粗悪品が各校に納品されているとの通報を受け、直に常務が出頭し県の課の加藤課長補佐の具体的事例の指摘を受けたので調査を致した処、これが事実であることがわかりました。

即ち、当社品は活動ざかりの生徒の使用に耐るべく、その材質、工作共一般ロツカーと全く異る高級、堅牢品を製作して居りました。

岩田氏の不当利得

然るに岩田氏は、当社カタログで販売し乍ら、市中の一般粗悪品を安く仕入れ、光葉製品として偽つて納入し、不当利得をしていたのであります。

岩田氏の背信による契約解除

この背信行為により当社は五十年九月、岩田氏との契約を直に解除しました。

岩田氏のコーヨー(株)設立営業開始

その後、岩田兄弟はコーヨー株式会社なるものを設立して、当社と同業の仕事を開始し、当社の信用を利用して今日に及んでいます。

当社のカタログを引用、背信を重ねる

この間当社のカタログや工作説明書をそのまま引用して、自己のカタログにせ、自己カタログでまずい時は、手持していた当社カタログを配布する等の詐りを重ね、又製造工場など全然もたない伸介販売なのに、製造工場云々を宣伝し、為に今日迄当社製品と間違えて迷惑を蒙つたり蒙りかけたりした例が数多く発生し、当社としても苦慮して居ります。

コーヨー(株)の不当行為の事例

当社の図面を用い乍ら、五十一年岡山県吉備小学校を熊平金庫商山営業所を経て納入したが、粗悪品で検査合格もむずかしく、困難した旨、熊平所長が当社へ話しました。

松山日赤も当社図面を用い乍ら岩本商会を通じて納入し、粗悪品の為工事請負の熊谷組と設計事務所から直接当社へ抗議の電話があり、その事実が判明しました。

京都府、兵庫県が当社製品を指定したものを、当社と無関係の(株)三吉なる業者に落札させ、当社製品であるかの如く見せかけて

納入しようとしたが、主務官の事前察知で未遂となりました。

茨城県はコーヨー(株)の採用を拒否

更に当社大阪営業所長の平井忠(五十一年九月懲戒免職)が当社員としてセールスしたものを横滑り受注して販売していたが、平井が当社を免職されるやコーヨー株式会社北関東営業所を開設して類似営業を始めましたが、茨城県は県関係方面にこれを用いない様通告を発しています。

当社の反省

コーヨー株式会社岩田氏が斯かる行為をすることは、甚々遺憾のことでありますが、当社としても、彼等を一時的に用いた結果、斯様な仕を起さしたことに対し、需要先の皆様に深く御詫びすると共に自己の反省も又厳しく致すものであります。

以上の通りですが、何卒事情御監察下さいます様伏て御願い申し上げますと共に、当社も又初心に返り、益々品質の向上に努めて参る所存で御座居ます。

別紙三

高校用ロツカー下駄箱こ採用に付いてのお願い

拝啓 貴殿愈々こ清祥の事と存じます。

さて当社が学校用ロツカー(コヨボツクス)を開発し製作を開始致しましてから既に十余年になり全国各学校で広く採用され、その実績は常に学校用ロツカーの主位を占めております。

特に貴茨城県下においては県立結城一高、日立一高、那珂湊水産高校等では早くより当光葉スチール製品をこ採用頂き、使用材料、加工法こ使用に際しての能等、広くこ信用を得て参りました。

それに加え昭和四十六年県立結城二高、猿島農芸高校の改築新設に当り貴営繕課より、光葉スチール製品のこ指定を頂き今日迄今年度新設高校、北総高校を除くすべての改築新設高校にこ採用スチール家具は当光葉スチール製品をこ採用頂いて参りました。これは偏えに貴営繕課皆々様の当コヨボツクスに対するこ理解とこ指導を頂いた賜と存じ深い感謝を申し上げますと共に更に一段の努力を以つて報い参り度いと存じます。

然る処最近当社名に類似したコーヨー株式会社なるものが、メーカーと称しパンフレツト等をバラ蒔いておりますが、これは元当社営業に従事しておつた者達が作つた社名であつて製作工場等は全く持たずどこで製作されるものか不明であり、当社とは全く関係のないものであります。特にゼネコン等においては当光葉スチールと間違つて取扱われるゼネコンも有り長年にわたり順調なこ信用を得て推進して参りました当社の苦心も水泡となる恐れがあり甚だ残念なことであります。しいては貴茨城県にもこ迷惑をおかけする事にもなりかねませんので、貴営繕課におかれましてもブローカー的なコーヨー株式会社なるものと間違うことなく適切なるお取り扱いとこ処置方お商い申し上げます。

別紙四

一覧表

被告の配布文書のうち虚偽の部分の主なるもの(要約) 真実

1. 原告は製作工場等は全くもたずどこで製作されるものか不明 原告は北川金属工業(株)と提携し、ここで製造しているものであり、このことは被告も充分知悉している。被告は原告製品を粗悪品であるかの如くいうが、右北川金属工業(株)はJIS標示工場である。逆に被告の工場はそうではない。

2. 愛知県から粗悪品の指摘を受ける かような事実は全くない。現在も原告は愛知県の指定業者として製品を納入している。

3. 岩田氏は当社カタログで販売し乍ら、市中の一般粗悪品を安く仕入れ、光葉製品として偽つて納入した かような事実は全くない。

4. その後、岩田兄弟はコーヨー株式会社なるものを設立し…当社の信用を利用している 被告の文章の流れからすると被告と岩田との契約解除後原告は設立したとなつているが、前述の如く萬国貿易(株)を昭和五〇年二月に商号変更したものであり、このことは被告は当時から知つているのである。 また原告が被告の信用を利用したことなどない。

5. 当社のカタログを引用、背信を重ねる 当社のカタログや工作説明書をそのまま引用して、自己のカタログに載せ、自己のカタログでまずい時は、手持していた当社カタログを配布 全くのいいがかりである 原告は自社でカタログを作成しこれを使用して営業活動を行なつている。

6. 岡山県吉備小学校納入に際し、当社の図面を用いた。粗悪品で検査合格もむずかしかつた。 かような事実は全くない。

7. 松山日赤の件 当社の図面を用いた。粗悪品である。 かような事実も全くない。

8. (株)三吉の件 三吉に落札させた 当社製品の如く見せかけて納入しようとした 事実と反する。 これは(株)三吉が被告のカタログに記載されている名古屋営業所(従前は岩田が行なつていた)の電話番号(原告の電話番号と同じ)をみて電話してきたことから間違いが生じたものである。

9. 茨城県はコーヨー(株)の採用を拒否 被告が古いカタログを回収しなかつたことにより発生したことである。 かような事実は全くない。

別紙五

謝罪広告

当会社は昭和五〇年二月一日以降現在に至るまで「コーヨー株式会社」なる商号にて営業を継読して参りましたが、右商号は貴会社の商号権を侵害するもので貴会社に多大な迷惑をおかけ致しましたことをここに深く謝罪致します。

昭和 年 月 日

名古屋市東区泉一丁目三番三二号

コーヨー株式会社

代表取締役 岩田重代

長野市篠ノ井布施高田七一番地一

光葉スチール株式会社

代表取締役 午越経基殿

別表一

〈省略〉

別表二

〈省略〉

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